<<さくらヒロイン?編>>

■陸軍病院前にて

大神  「さくらくん、今日はいつもの着物じゃないんだね?」
さくら 「サマードレスって言うんです。似合いますか?」
大神  「よく似合っているよ」
さくら 「大神さんにそう言ってもらえるなんて、思いきって着てみてよかったです」
大神  「ネックレスも桜貝なんだね。やっぱりさくらくんは桜色が似合うなあ」
さくら 「そうですか?」
大神  「もちろん一番好きな花は桜なんだよね」
さくら バラです!
大神  「え? どうして?」
さくら バラなんです!
大神  「おかしいなあ」
さくら バラって言ったらバラなんです!!
大神  「でもバラは織姫君のイメージだよ」
さくら バラや言うたらバラなんや! このドアホ!!
大神  「うっ……。それじゃ、紅蘭だ……」
さくら 「大神さんがしつこいからですよ」
大神  「だって、いつもの着物。あんなに似合っているのに」
さくら 「あれは縫ってくれた母の趣味です!」
大神  「じゃあ、そのサマードレスも?」
さくら 母が送ってきたんです、仙台から!
大神  「じゃ、『さくら』って名前も……?」
さくら 母がつけたんです!


■仙台にて

 大神とさくらは寄り道をすることにした。

さくら 「あっ! タケシくん!」
タケシ 「なんだ、さくらじゃないか」
さくら 「タケシくん、今はどうしてるの?」
タケシ 「雷に打たれて医者に助けてもらってから、ぼくも医者になろうと思ってね。今は大学の医学部に通ってるんだ」
さくら 「立派なのね!」
タケシ 「さくらだって、帝都では有名な人気女優じゃないか」
さくら 「そんな、あたし、それほどでも……」
大神  (なんなんだ。このラブラブチックな雰囲気は……)
タケシ 「じゃあ、そろそろぼくは行くよ」
さくら 「ええ。またいつか会いましょうね」
大神  (よし……。今がチャンスだ。積年の恨みをここに……!)

 ギュウウウッ!

さくら 「誰なの? 背中をつねるのは!?」
大神  なんだか、ずいぶん楽しそうだったね
さくら 「お、大神さん!」
大神  いいね。恋人みたいで
さくら 「あれは幼なじみのタケシくんで、久しぶりに会って……」
大神  弁解はいいよ
さくら 「ちょっと、大神さん」
大神  立派なのね(さくらの真似)」
さくら 「……」
大神  鼻の下が、デレデレして、みっともないよ
さくら 「なに、亭主みたいなこと言ってるんですか?」
大神  失礼だな! 俺がいつ君の亭主になったんだい?

 結構、過去を根に持つタイプの大神であった。


■さくらの実家の前にて

さくら 「ここがあたしの家です」
大神  「うわぁ! 立派な家だなあ!」
さくら 「そんな、ただ古いだけですよ。さあ、母が待ってますから」
大神  (娘に押し付けるぐらい桜が好きなお母さんって、どんな人なんだろう?)
さくら 「あれがあたしの母です」
若菜  「はじめまして。さくらの母、真宮寺若菜です」

 ♪ぱららぱららら〜ん(愛のテーマ)

大神  (な、なんて清楚で美しい人なんだ! い、いかん! 頭がクラクラしてきた。しっかりしろ、大神一郎!)
さくら 「大神さん。どうしたんですか?」
大神  「は、は、はじめまして。おくさん!!
さくら 「ちょ、ちょっと大神さん!」
若菜  「まあ。面白い方ね」
大神  「は、はあ……(ポッ!)」
さくら 「今はおばあさまが権爺を連れて湯治に行ってるので、家にいるのはお母様だけなんですよ」
大神  チャーンス!!
さくら 「…………なんですか、それ?」


■家に入って

さくら 「亡くなった父の浴衣なんですが、大神さん、着てください」
大神  「そんな大事なものを?」
若菜  「着てくださいな。きっとお似合いですよ」
大神  はい! 喜んで!
さくら 「(ムッ!)……」


■その夜

若菜 「大神さん。若菜です。よろしいかしら?」
大神 (おおっ! こ、こんな夜更けに大胆な……!)
若菜 「ちょっと縁側に出てみませんか?」
大神 「はいはいはいっ!」
若菜 「母親ってつまらないものね……。結婚して、家に入って、子供を育てて……。でもそれなのに、子供は勝手に大きくなったような顔をして……」
大神 「そ、そうですよね!」
若菜 「さくらはみなさんにご迷惑をおかけしてませんか?」
大神 「迷惑と言うほどではありませんが、バラが好きなのは変だと言ったら怒鳴られました」
若菜 「せっかく私が桜模様のの着物を作ってあげたのに、バラの花なんかを好きになってしまって……」
大神 「そ、そうですよね! さくらくんが間違っています!
若菜 「ところで、あなたは何のために戦っておられるの?」
大神 「も、もちろん、す、好きな人がいるからです!」
若菜 「いいわね。若い人って。一途で純粋で……。ところで大神さん。あなたの好きな花は?」
大神 「もちろん桜です!


■翌朝

若菜  「朝ご飯はほとんどさくらさんが一人で作りました」
さくら 「どうですか? 大神さん」
大神  「う、うん。……いいと思うけど」
若菜  「このおみおつけはちょっと味が濃すぎるかしら」
さくら 「え? そうですか? じゃ、あとで教えてくださいね」
大神  「お、俺にもぜひ!


■墓参りへと

若菜  「大神さんと一緒にお父様のお墓にご挨拶に行ってきなさいな」
さくら 「え!? おかあさま!」

 大神とさくら、墓に手を合わせる。

さくら 「本当は真宮寺家の墓は一族以外に見せてはいけないことになってるんです」
大神  「え? じゃ、じゃあ、俺のことを……?」
さくら 「(ポッ!)……」

 大神が墓に語りかける。

大神  「真宮寺大佐……。さくらくんは俺のとして引き取らせていただきます!」


■武蔵にて

さくら 「お父様!」
一馬  「さくら……。母さんによろしく……伝えてくれ……」

 ダダダダダダダダッ!(大神の駆け寄る音)

大神  お任せください!
さくら 「ちょ、ちょっと、大神さん……」
大神  お父様と呼びなさい!」


■エピローグ

 フランスに向かう船の上。大神は手紙を読み始める。

手紙 「一筆申し上げます。
帝都の桜も満開……。平和をかみしめています。
大神さん。中尉昇進、改めておめでとうございます。
別れはつらいものですが、出会ったときの喜びを胸に抱いて、出来ることなら大神さんと一緒にパリまでいきたい。
けれどそれは大神さんが喜ばないだろうと思います」

 汽笛が鳴る。

手紙 「大神さんにいただいた、たくさんの教えや思い出を大切にして……。
お手紙たくさん書きます。お部屋も掃除しておきますね。
では、お体に気をつけて。
お帰りをお待ち申し上げております。

かしこ

  帝国華撃団 花組 真宮寺さくら
の母
真宮寺若菜
大神  「若菜さん……」

声   そこまでよ!!
大神  「えっ!?」
さくら 「真宮寺さくら、参上!」
大神  「どわあぁっ! いったいどこからわいてきたんだ!」
さくら 「いつものことでしょう!?」
大神  「た、確かにそうだけど……」
さくら 「大神さん! これは『サクラ大戦』なんですよ! これじゃまるで『ワカナ大戦』じゃないですか!? ヒロインはあたし、さくらなんです!」
大神  「そ、そんなことを言うと、マリアやすみれくんたちのファンが怒るぞ!」
さくら 「問答無用! この霊剣荒鷹の錆びにしてやるわ!」
大神  「ま、待て。さくらくん! この手紙には続きがある」
さくら 「なんですってぇ?」
大神  「と、とにかく読んでみてくれ!」
さくら 「チッ!」
手紙 「追伸
娘が『さくら』という名前が気に入らないようなので、あの子の好きな『ばら』に改名することにしました。
そして『さくら』という名前は、この私がいただくことにします。
これからは私のことを『真宮寺さくら』と呼んでくださいね
  真宮寺若菜改め 真宮寺さくら」

さくら 「な、な、な、な、なんですってぇ!!!!」
大神  「ほ、ほら。君はもう『真宮寺ばら』なんだ。そして若菜さんが『真宮寺さくら』。だから、これでこの物語も『サクラ大戦』のままでいいだろう?」
さくら 「だ、だったら、これからは『バラ大戦』よ!!」
大神  「ば、『薔薇大戦』!! それだけは勘弁してくれ!」

斧彦  「あ〜ら、いいじゃないの。一郎ちゃ〜ん」
大神  「どわあぁっ! やっぱり出たか!」
琴音  『薔薇大戦』……。美しい響きね」
菊之丞 「わ、わたし、うれしいです……」
琴音  「大神中尉。これからあなたが薔薇組の隊長よ」
斧彦  「きゃっ! そしてあたしたちがヒロインね」
大神  「あんたたちならヒーローだろうが!」
菊之丞 「わ、わたし、ヒロインのほうがいい……」
大神  「さ、さくらくん! 俺が悪かった。助けてくれ!」
さくら 「知りません!」
大神  「さ、さっくらく〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」

 汽笛が鳴る。

 ♪ちゃららん〜ららららららん〜らん〜(夢のつづき)

花組一同「おめでとうございます!」
さくら 「これにて帝国歌劇団花組の公演は本当に全て終了いたしました」
琴音  「たとえ舞台に幕が降りても、みなさんとともに作った思い出は決して消えることはないわ」
斧彦  「そしてこれからもみなさんと、新しい思い出を作っていけると信じてるわ!」
菊之丞 「ま、また気が向いたら、いつでも劇場に会いに来てくださいね。ま、待っています」
さくら 「そのときまで、ほんの少しのお別れです。またいつの日か『薔薇大戦』でお目にかかりましょう」
薔薇組一同「それではみなさん。ごきげんよう!!」




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